ソーシャル・マーケティングとは、1971年に、マーケティング理論の大家であるフィリップ・コトラー博士が、行政機関やNGOといった非営利組織の手法として提唱した考えである。従来は、マーケティングは、企業が自社の商品・サービスを買ってもらうための活動であり、極めて商業主義で、非営利とは対極のものであると考えられていた。しかし、非営利団体にとっても、活動資金を調達するためのプロモーションを行ったり、あるいは受益者へ働きかけたりするのに、マーケティングは有効なのである。たとえば、途上国の住民の衛生状況を向上するためには、「石鹸で手を洗う」という行動の必要性を喚起するために、宣伝やプロモーション、(配布する石鹸の)流通網構築など、マーケティングの技術を駆使すれば、効果を拡大させることができる。このような社会的有用性を広げることを目的とした活動をソーシャル・マーケティングとコトラーは呼んだ。
近年では、コトラーと研究を共にしていたナンシー・リー氏もソーシャル・マーケティングの世界的権威として活躍している。
また、非営利組織のみならず、企業のCSR(社会貢献活動)や、製品・サービスの売上の一部を寄付するとPRすることで拡販をするコーズリレーテッド・マーケティングも、ソーシャル・マーケティングの範疇だとする人もいる。
参考文献:
- フィリップ・コトラー、エデュアルド L. ロベルト著/井関利明監訳『ソーシャル・マーケティング―行動変革のための戦略―』ダイヤモンド社(1995年)
- フィリップ・コトラー、ナンシー R. リー著/塚本一郎監訳『コトラー ソーシャル・マーケティング―貧困に克つ7つの視点と10の戦略的取組み―』丸善(2010年)