認定NPO法人AAR Japan[難民を助ける会](以下、AAR Japan)、プログラムマネージャーの野際 紗綾子様、渉外担当の木下 聡様に話を伺いしました。(2017年12月14日)
■AAR Japan設立の経緯について教えてください。
AAR Japanは、当初、「インドシナ難民を助ける会」として相馬雪香によって1979年に設立されました。相馬は、1970年代後半に多くのインドシナ難民が ボートピープルとなって海外に脱出している時、海外の人から「日本は何もしなくて冷たい」と言われたのに対し、「そんなことはないはず」と募金活動を始めました。そして、全国にインドシナ難民の現状を伝えてまわり「日本人が一人1円出せば1億2千万円になります」と寄付の協力を呼びかけた結果、4ヵ月で1億2千万円という寄付目標金額を達成したのです。インドシナ難民支援活動がきっかけとなり、その後アフリカへの支援も開始するのに伴い、名称を難民を助ける会(AAR Japan)に改称しました。
また1997年には、主要メンバーとして参画した地雷禁止国際キャンペーン(ICBL)がノーベル平和賞を共同受賞し、翌1998年には国連に国際NGOとして公認・登録されています。
■現在はどのようなところで、どのような支援活動をしていますか?
2017年12月現在、日本を含む16ヵ国で活動をしており、主な活動内容としては下記の5つがあります。1~4の活動は独立して行うのではなく、現地に出向き現状をまず調査した上で、必要性に応じて組み合わせています。
- 「緊急支援」・・トルコ、ギリシャでのシリア難民支援など、災害や紛争が起こった際に、現地の方々のレジリエンス(立ち直る力)の視点をもちつつ、緊急支援を実施します。
- 「障がい者支援」・・緊急時に取り残されがちな障がい者支援、および障がい者が自立して暮らしていけるようになるための職業訓練などを実施しています。
- 「地雷・不発弾対策」・・地雷は高度な専門知識なくても作ることができ、作るのにそれほどお金もかからないため、紛争地域では今でも多く使用されています。そのため、地雷の危険から身を守るための講習、被害者支援、除去支援などの対策を行っています。
- 「感染症対策」・・病気が広まるのを予防するため、安全な水の提供や衛生啓発活動などを通じた感染症対策を行っています。
- 国内においては現地の実状について知り、国際協力に参加・協力いただける人を増やすため、講演会・チャリティイベントや訪問学習の受入れを積極的に行っています。
■最近の企業との協働において、どのようなことを感じますか?
最近は、企業の寄付に対する関心が高まってきていると感じます。その理由は、消費者や社員が「(この企業は)どのように社会に貢献しているのか」ということについて、関心が向き始めていることに起因していると考えています。
企業の方々の関心の高まりを示す1つの例として、リコーグループの社員が主体となって活動している「リコー社会貢献クラブ・FreeWill」という組織があります。これは、この組織の趣旨に賛同し会員となった社員が給与と賞与の端数を拠出し、集まった資金を社会課題の解決のために活動しているNPO等に寄付するというものです。その活動は寄付のみにとどまらず、昨年は当協会の「ザンビアのお母さんと子どもの命を守るプロジェクト」への寄付後、寄付した会員が現地での活動を確かめたいと自費でザンビアまで足を運んで下さいました。プロジェクト完了後の活動報告会では、社内のテレビ会議で全国の拠点を繋ぎ、出来るだけ多くの会員が参加できるように呼びかけや情報共有を行なっているのに驚きました。
また、単なる寄付ではなく時には商品を共同開発する形で協働することも増えてきています。その1つに「魔法のおかし ぽるぼろん」というのがあるのですが、名前を聞いたことがあるでしょうか?
この商品は、2011年の東日本大震災で被災した障がい者へ、チャリティではなくビジネスとして継続できる職場を作りたい、と考えた福島県の福祉事業所の関係者の声に応えるかたちで、日清製粉グループと当会などが活動に加わって協働した結果、誕生した商品です。日清製粉グループは製菓技術の指導、当会はパッケージデザインや調理器具の提供による支援、とそれぞれの持っている強みを持ち寄ることで社会に対してより大きなインパクトを与える取り組みとなりました。
■SDGsの中で、特にどのような課題について企業と協働していきたいですか?
特に特定のテーマは設けていませんが、当会だけでは解決できない問題について情報を発信することで、一緒に解決に向けて取り組みたいと手を挙げていただける企業と協働していきたいと考えています。
最近の話では、スーダンで現地スタッフが支援している最中、足がない障がい者に出会った時、最初は地雷を踏んだせいと思ったのですが、本人の話を聞く中で、菌が皮膚内に入ることで足が何倍にも腫れあがり、組織が破壊されていくマイセトーマという風土病のせいであることがわかり、途方にくれたことがあります。しかし、「困っている方がいる以上、放っておけない」という思いから会内で共有した結果、マイセトーマの解決に取り組む製薬会社、エーザイ株式会社やDNDi(Drugs for Neglected Diseases initiative:顧みられない病気の新薬開発イニシアティブ)へと話が繋がり、解決への道のりが徐々に見え始めています。これは、SDGsの3番の目標「すべての人に健康と福祉を」のターゲット3.3に関連した活動と言えます。
SDGsの17の課題はどれも簡単に解決できるものではありませんが、SDGsの「誰一人取り残さない」というキーワードは当会のミッションと重なりますので、目標達成に向け垣根を超えた協力関係を広げていけたらと思います。
参照URL:認定NPO法人AAR Japan[難民を助ける会]:http://www.aarjapan.gr.jp/